第52回情報リテラシー連続セミナー@東北大学は、5月29日(土)に今回も新型コロナウイルスの影響で、オンライン会議システムを用いた開催となりました。
愛知県春日井市立高森台中学校 校長である水谷年孝先生をお迎えし、「スモールステップでのGIGAスクールへの対応」と題してお話しいただきました。水谷先生は、愛知県の小・中校で教鞭を取り、教頭、校長、春日井市教育委員会指導主事、同教育研究所所長、出川小学校校長を経て、令和2年より高森台中学校校長としてご活躍されています。
今回のセミナーでは、GIGAスクール構想により実現したICT活用への先進的な取り組みと、その背景にある長年の積み重ねについてご紹介くださいました。
水谷先生は、「子供が自分たちで学び続けられる」ことを目標のために、その手段としてのICT活用の推進をされてきたそうです。
授業では、クラウドでの共同編集機能(複数人のユーザーが一つのファイルに同時にアクセスして、作業を行えるというもの)を利用して、次々に書き込まれる他の友達の意見を画面上で見ながら自分の意見を書き込んだりするような活動が行われているそうです。
このような実践を行なうのに重要な姿勢として、トラブルが起きることも前提として柔軟に取り組むことや、日常の授業が良くなるように、持続可能なことをスモールステップで取り組むことが大切であるとお話しいただきました。
次に、春日井市でモデル校になっていた出川小学校では、11年間をかけて日常授業の改善として、「学習規律の徹底」、「きちんと教えて習得、活用」、「全教員毎日毎時間無理なくICT活用」、「ささえる研修システム」ということに取り組まれてきたというお話がありました。
実物投影機などの、情報を提示するためのICT活用により、教師がわかりやすく授業を行なうことや、自分が書いたノートを紹介しながら友達と学び合うような、日常的な学習活動が徹底されてきたからこそ、先に挙げたような児童生徒のICT活用が充実したそうです。
また、教師の学びを支える仕組みに関するお話もありました。まずは校務でICTを活用して、教師がICTの便利さを体験から実感してきたことや、短時間で日常的な実践を共有するような研修を行なってきたというご紹介をいただきました。
このように、本セミナーでは、春日井市立の小・中学校における、先進的な児童生徒のICT活用の事例をモデルとして見せながら、持続的に無理なくできるICT活用や、それを支える学習規律の徹底、教員による学習支援について、各校の教員が理解して進めて行く手法について、丁寧にご説明いただきました。同時に、春日井市の現在に至るまでの長年の取り組みからたくさんのことがわかりました。
今回の連続セミナーでは、210名ほどの参加者が募り、オンライン会議での講演と、ブレイクアウトルームが2回設定され、水谷先生へのご質問も多くありました。運営に関わる学生が共同編集で行っている記録では、参加者の方々から、できることから少しずつ始めたい、継続していきたいというようなコメントが残されていました。児童生徒のICT活用が黎明期を迎えている今、悩みながらも実践に取り組もうとしている多くの参加者の方々にとって、貴重なご講演をいただきました。多大なるリーダーシップを発揮され、多くの教員がICT活用実践にチャレンジできるような環境を整えられてきた水谷先生からお話を伺えましたこと、心より感謝申し上げます。
(メディア教育論ゼミOG 遠藤みなみ)