第53回情報リテラシー連続セミナー@東北大学は、新型コロナの影響により、前回に引き続き、オンライン会議システムZoomを活用しての開催となりました。今回は「教育YouTuberとして過ごした9年間で見えたもの」と題して、教育YouTuberの葉一(はいち)さんにご講演いただきました。葉一さんは教育YouTuberの第一人者であり、「とある男が授業をしてみた」というYouTubeのサイトを運営しています。このサイトでは多くの授業動画を公開しており、本日時点で153万人のフォロワーがいらっしゃいます。
はじめに、葉一さんがなぜこの活動を行なっているのかといった経緯や想いについてお話いただきました。葉一さんは、高校時代のある教師との出会いをきっかけに教師になりたいという想いを抱くようになりました。最終的に教師に戻ることに決めて、大学を卒業してから企業で社会人を開始し、その後学習塾の講師に転身されました。ここで、保護者の所得により学習機会に差が出ることに違和感を感じていた時に、当時まだそこまで日本で知名度が高くなかったYouTubeと出会います。そして経済的に恵まれない子どもでも無料で学ぶことができるようにと、ご自身の授業動画を撮影して投稿するようになりました。ネット上で活動していると批判を受けることも多くありましたが、子どもたちからの激励のメールが多く届くようになり耐えたそうです。
次に、葉一さんの考える授業動画の工夫についてお話しいただきました。葉一さんは動画だと反復学習や正解不正解がすぐにわかるなど成果がわかりやすいことがメリットである反面、強制力がないことがデメリットであると考えているといいます。また、授業動画を制作する際に、どのような対象に何を目的に提供するのかを明確にすることが大変重要であることについても紹介いただきました。授業動画の対象と目的に応じて、内容や提供方法を設計することが重要であることを学びました。
最後に、この活動への想いをお話しいただきました。葉一さんは、どのような批判を大人から受けようとも、子ども達が見たくないといわれた時には引退しようと決心して活動を継続してきたといいます。教育はすぐに大きな変化を起こすことは難しいけれど、授業動画といった新たな学び方の提供を通して外から波風を立てることならできるのではないかと考えて活動されてきたそうです。また、学校の労働環境改善により、先生方が生き生きすることで、その授業を受ける子供達にも良い影響があるような活動を継続していきたいとお話しされました。
今回の連続セミナーでは、前回同様、Zoomを用いたオンライン会議とブレークアウトルームの機能を使ったグループディスカッションが行われました。グループディスカッションを経た全体討議では、多くの高校生や大学生からも積極的に意見が出され、大変盛り上がりました。
葉一さん、この度は大変お忙しい中、貴重なお話を大変ありがとうございました。
(博士後期課程3年 小田理代)