第61回情報リテラシー連続セミナー@東北大学は、新型コロナウイルスの影響により、前回に引き続き、オンライン会議システムZoomを活用しての開催となりました。
「教師が自分の頭とからだで考えるということ」と題して、東京学芸大学 教職大学院 准教授 渡辺 貴裕 先生にご講演いただきました。
渡辺先生のご専門は、教育方法学、教師教育学です。特に、「演劇的手法を用いた学習」や「実践の省察(リフレクション)のための対話」をテーマに研究をされています。論文や書籍にとどまらず、noteやYoutubeといった様々なメディアにおいても、教育方法や教師教育に関する発信をされています。
今回のセミナーでは、教師が、授業での出来事を自分の感覚を働かせて経験することの大切さや、渡辺先生のお立場から見たICTやデジタルの受け止め方についてお話いただきました。
教師という仕事の面白さ・良さというのは、実践を通して新たな気づきが生まれるところにあるはずだけれども、授業の事後検討会(協議会)においては、教師自身がどう感じたか、どういう気づきがあったかといったことではなく、あらかじめ与えられていた望ましい姿から授業を振り返ったり、足りていない部分を埋めていく方法を話し合ったりしている場合が多いことに、渡辺先生は問題意識を持たれたそうです。そこで、渡辺先生は教職大学院の講義や教員研修において「対話型授業検討会」に取り組まれています。「対話型授業検討会」では、参加者は自分が学習者としてどう感じたり考えたりしたのかを伝え合いながら、共に省察(リフレクション)を深めていきます。授業を外から眺めるのではなく、状況の中に入ることで教師の学びが深まっていくとのことでした。
学校教育におけるICTやデジタルの受け止め方については、テクノロジーがもたらすものは「増幅」でしかないため、何もないところにテクノロジーが入ってきたとしてもうまく行かないことに留意する必要がある、といったお話がありました。ICTやデジタルが入ってきても、授業観や学習観といった前提が重要であることには変わりがないため、教師が、自らの授業観や学習観を問い続けながら、ICTやデジタルを受け止めていく必要があるとお話しいただきました。また、身体性かICTか、といった二項対立で考えるのではなく、教師自身が子供と一緒にICTやデジタルを経験する中で、良さや課題を見つけていき、それを授業に生かしていくことが大切なのだとお話しいただきました。
今回の連続セミナーも前回同様に、Zoomを用いたオンライン会議での講演とZoomの1機能であるブレークアウトルームを駆使したディスカッションが行われました。また、以前の対面でのセミナーと同様に、今回も、参加者の皆様から沢山のご質問が集まりました。
ディスカッションでは、渡辺先生が取り組まれている「対話型授業検討会」のように、自分が感じたり考えたりしたことを参加者間で伝え合いながら、共に省察(リフレクション)を深めていきました。授業の事後検討会の在り方など、教師が慣れてしまっている様々な仕組みに対する議論や、授業観や学習観といった根本的なところに立ち返って考えることの大切さについての議論が活発に行われました。
渡辺先生、この度は大変お忙しい中、貴重なお話をしてくださり本当にありがとうございました。
(メディア教育論ゼミOG・安里基子)