経験者の声
Information
氏名 Name | 小嶋一輝 Kazuki Kojima |
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学年 Grade | 工学研究科修士2年 ECEI M2 |
指導教員 Supervisor | 尾辻泰一 Taiichi Otsuji |
留学期間 Stay | 平成25年7月1日-8月25日 Jul. 1st-Aug. 25th, 2013 |
受入先 Destination |
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私は2013年7月1日~8月25日までアメリカで研究滞在を行いました。 7/1-8/10 Rice大学 8/10-8/25 University at Buffalo(ニューヨーク州立大バッファロー校) においてそれぞれ研究を行いました。
きっかけ
初めに留学のお話を頂いたのは、就活が終わり一息ついたゴールデンウィーク明けだったかと思います。私の指導教官である尾辻先生からこのプログラムを紹介していただいたことがきっかけです。 このような話をいただけなければ、留学をすることはなかったと思います。私は海外があまり好きでなく、なるべく日本から出たくないと考えていました。その理由は一人でアメリカのニューヨークに旅行した時に、食事やサービス等が、日本に比べて水準が低いと感じたためです。また、私は英語が苦手なことも海外に行きたくない理由の一つです。前回の時も結局、最後まで英語を全然話すことができませんでした。
このように正直初めはかなり抵抗があったのですが、一人ではなく、研究室の他の学生と二人で一緒に行くとのことだったので、それであれば英語の問題は少なくても大丈夫かなと思い、行くことを決意しました。
留学先の選定と留学前の準備
留学を決断してから実際に渡航するまで二ヶ月弱しかなく、かなり準備は忙しかったです。本来であれば少なくても3ヶ月は準備期間が必要かと思います。
留学前の準備として、
- 受け入れ先とのやりとり
- ビザ申請
- 実験計画策定
- 実験用のサンプル準備
- ビザ、その他渡航の手続き
などを行いました。
留学先の選定
尾辻先生と話し合った結果、私の研究内容に近いアメリカのRice大学とUniversity at Buffaloの研究室へ行くことになりました。
私の行ったRice大とUniversity at Buffaloの研究室は、私の所属している尾辻研究室と共同研究等を行っていて交流があるため、受け入れの許可を取ることは難しくありませんでした。
また、受け入れ先のRice大の研究室は日本人の河野淳一郎教授の研究室で日本からの短期滞在の学生を定期的に受け入れています。その点で、Kono Labの事務の方、研究員、学生の方々は短期滞在の学生の扱いに慣れており非常に様々なやりとりがスムーズに事が運びました。ホテルもそちらで手配してもらいました。
また、Rice大も留学生オフィスがあり、さまざまな行事を催しており、大学全体のサポートも充実しています。 宿舎は大学の宿泊施設が使えそうでしたが、このプログラムの日程との兼ね合わせで、結局大学から徒歩30分のキッチン付きホテル(Residence Inn)を手配して頂きました。
このように、受け入れ先とのやりとりや宿泊先の手配などはほぼ向こうでやっていただいたため、期間が短くてもなんとか間に合いました。でもそれ以外の手続きだけでも時間がなく忙しかったです。
渡航前準備
準備で一番面倒なのはおそらくビザの手続でしょう。
まず、一人でやるとよくわかりません。幸い申請の経験がある先輩がいたので、その先輩にわからないところは聞きながら、申請を行いました。
また、アメリカのビザは大使館での面接が必須ですので、注意が必要です。
まず、受け入れ先の大学にDS2019という書類を発行してもらいます。こちらの大学での書類がいくつか必要になるため、メールで数回やり取りを行いました。
その後、必要書類が揃ったら、受け入れ先の大学から国際郵便でDS2019が届きます。
これが届いたら次にビザの申請です。DS160というフォームをネットで入力します。かなり細かく量も多いため面倒です。その後、面接料を払って面接の予約をします。
日程が埋まっていて面接の予約がなかなか取れないこともあるので余裕を持って行動しましょう。また、これらの情報は私が行った時のものです。責任は負いかねますので、詳しくは自分で調べてください。
保険
Rice大の留学生は保険の加入が義務付けられています。そのため渡航前に保険に加入しました。加入義務がなくても、万一に備えて、保険は加入しておいたほうが良いと思います。
日本で海外保険に加入していない場合は、現地でRice大の保険に入ることも可能でしたが、自分たちはRice大の他にUniversity at Buffaloにも行くので、渡航期間全てをカバーしている方が良いと思ったため、日本のJTBで保険の申し込みをしました。費用は3万円程度でした。
また、保険の加入を証明する書類の提出が必要でしたが、私は簡単な書類しかなく、大丈夫か不安でしたが、特に問題はありませんでした。時間がある人は英語の詳しい補償内容の紙を保険会社に用意してもらった方が無難でしょう。私は三日前くらいに申し込んだのですが、英語の補償内容は申請してから受け取りまで一週間ほどかかると言われ、断念しました。
留学中の研究
研究はこちらで測定サンプルを用意して、それを向こうの測定装置で光学特性を測定する、という形式で行いました。
Rice 大学
第一週目は初めに大学への諸手続きの必要があり、また独立記念日で週末が4連休であったため、実験装置のざっくりとした簡単な説明を受けただけで終わってしまいました。 二週間目は実験装置(反射型THz-TDS)の説明をより詳しく受けて、測定の練習を数回行いました。三週間目に別の実験装置(透過型THz-TDS)の説明を受けました。ここまでは同じ研究室の同行者の栗田くんとともに作業を行なっていたが、この後、反射型と透過型で二人別れて作業する事となり、私は反射型の方を担当して実験を行いました。光学の実験には測定前にアライメントと呼ばれる光路などの調整作業が必須です。各装置や測定プログラムの説明は受けましたが、このアライメントの作業については自分たちで一から始める必要があり、どのような調整が必要か、それを実現するにはどのような方法でどのような作業を行えばよいか、を逐次考えながら実験を進めて行きました。
このアライメントを厳密に行わなければ、きちんとしたデータは得られないため、正確な測定ができるようになるまで、この作業に二週間ほど時間をかけました。その後サンプルの測定に移りことができ、測定を行いました。幸いにも良さそうなデータがいくつかのサンプルで得られたため、最後のほうはデータ比較のためのリファレンス測定を行いました。
University at Buffalo
ライス大学での実験に引き続き、持参したサンプルの測定を行いました。ライス大学ではテラヘルツ領域での狭い範囲での光学特性の測定のみでしたが、こちらでは、FTIRを用いて遠赤外から中赤外の広い領域での光学特性を測定しました。
また、今回の滞在では渡航前に時間がなく、渡航前にサンプルの電子物性等の測定を行う事ができなかったため、シート抵抗、光電流の測定など、サンプルの電子物性の測定も光学測定と並行して行いました。
研究進行で苦労した点
今回測定に用いた実験系は、事前にある程度の知識があるため、簡単な説明で使えるようにはなりました。
しかし単純に「測定ができること」と「正確なデータの測定ができることは難易度がかなり異なります。今回、前者は容易でしたが、後者は少し骨が折れました。そのためアライメント作業で二週間ほど要しました。実際測定し始めてみると、いろいろな課題に気が付きます。それらの課題を解決するためにソフト、ハードの両面でいろいろ調整するのですが、初めての実験系はノウハウがなく、課題解決の方法をまず考え、試行錯誤する必要があります。苦労しましたが、その分非常に良い経験となりました。
留学中の海外生活
食事
私が海外をあまり好きになれない最大の理由が食事です。 日本の食事はかなり質が高く、それに比べると海外の食事は、(特に安い食事では)かなり質が落ちます。また、物価の関係上、アメリカは食事の値段も高いです。その分量も多いですが、こんなに食えない、と思うことが多々ありました。昼食で安くて6~7ドルといったところで、それに加えてレストラン等ではチップがあるため割高になります。 日本の牛丼屋やコンビニ弁当のように5ドル以下で軽く食べられるようなところはほぼありません。
また、私はかなり偏食で嫌いな食べ物が多く、特にチーズが苦手です。 そのため、アメリカの料理は私の苦手なものが多いです。外食ばかりでは食費がかなり嵩むので、Rice大でのホテルでは自炊をしていました。Riceでの住居はすぐ隣にスーパーも有り、かなり便利でした。
それとは対照的に、Buffaloではスーパーが遠く、かなり不便な生活でした。Buffaloでは大学の近くのホテルに宿泊したのですが、(近くと言っても徒歩20分)Buffaloは田舎でホテルの周りにあまり施設がありません。スーパーに行くのが片道徒歩30分ほどかかり、ホテルに冷蔵庫もないため、買いだめもできず食事にはかなり困りました。朝はカロリーメイトみたいなもの、昼は大学で食べ、夜はシリアルなどで簡単に済ます、といった生活でした。
観光
ヒューストンではNASAと美術館に行きました。美術館はRiceの学生証を見せたら、無料でした。バッファローではナイアガラの滝に行きました。
帰国後の研究成果など
帰国後、今回の一連の実験について学会で発表しました。学会発表は何度か経験がありましたが、英語のオーラルは初めてだったので、かなり大変でした。それでもアメリカに行ったことにより英語のオーラル発表への心理的ハードルはいくらか下がったかと思います。 幸い、拙い英語でしたが発表は無事乗り切ることができました。
その後の研究としては、まず理論背景について理解不足の点があったため論文を読んで勉強しなおしました。本来であれば実験する前の段階で、もっとしっかりと理解しているのが望ましいのですが、私の勉強不足のため、実験していて疑問に思うところが多々ありました。そのため、論文等を読んだり先生方に聞いたりしてそれらの疑問点を解決し、理解を深めていきました。 また、今回の研究滞在での測定で得られたデータは、サンプルを作る際に予想したデータと定量的に異なる部分があったため、関連する論文等を読み、その原因について検討・考察を行いました。サンプルの設計段階では理論的な論文に基づいた極めて単純な式から値を算出したのですが、実際サンプルを作成するとなると、様々な要素があり、それぞれが測定値に影響する可能性があります。そのため理論値と実測値の違いが何に由来するのかと、それがどの程度効いてくるのかの検討・考察を10月から12月にかけて行いました。また、それと並行して、作ったサンプルを自分の研究室の実験系での測定も行いました。 学会発表した内容に、これらの結果に対する検討・考察と新たな実験結果を加え、成果を修士論文にまとめました。
留学中の研究成果が修士論文の柱となったため、このような留学の機会を頂き、なおかつ良い結果を得られたのは本当に幸運でした。留学先の関係の方々には本当に感謝しています。
留学により得たもの
- 研究成果
- 経験
- 以降の研究のモチベーション
- 英語の勉強の大切さ?
留学先での研究が結果として修士論文の柱となり、また、そこから発展的に研究を進めることができたため、非常に良い成果を得られたと言えると思います。また向こうの学生は学部の早い段階から研究室に配属されており、非常に研究熱心です。その点は日本の大学生も見習うべきだと思いましたし、私自身刺激を受けました。
反省点としては、やはり英語はあまり喋れなかったため、出発前に英語のスピーキングの練習を少しでもすべきだったと思いました。うまく喋れなくても、文法とか気にせずにとりあえずなんか話してみることが大事だと思います。私はどうしても話す前に頭でいろいろ考えてしまい、結局何も言葉が出てこない、ということが多々ありました。 そのことも含め、全体的に英語をもっとちゃんと勉強しないといけない、と痛感しました。
また、留学の経験は就職活動においても有利な材料になります。 行きたくないとしても、後々の事を考えて…という打算的な考えで行くのも大いにありかと思います。私は実際そのような考えでした。
おまけ
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持って行って便利だったもの
- 箸
- はさみ
- 大きめのクリップ
- 洗濯洗剤
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持って行ったほうが良かったもの
- 洗濯用の丈夫な紐(アメリカは乾燥機メインの文化のため、室内外に意外と干すところがないため)
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費用
- 航空券:21万円(Houston→Buffalo含む)
- 保険:3万円
- ホテル:Rice 20万円 / UB 5万円
- 食費:4~5万円