日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 岡田翔平 Shohei Okada
学年 Grade 情報科学研究科修士1年 GSIS M1
指導教員 Supervisor 田中和之 Kazuyuki Tanaka
留学期間 Stay 平成25年10月31日-12月29日 Oct. 31th-Dec. 29th, 2013
受入先 Destination 国立清華大学 National Tsing Hua University

留学のきっかけと準備

私が台湾の国立清華大学に留学していたのは、2013年の10月31日から12月29日のおよそ2ヶ月間の事です。きっかけは、その年の春に研究室の教授から、情報技術スキルアッププログラムを利用した留学についての説明を聞いたことでした。内容は、最大2ヶ月の留学が可能であり、なおかつ派遣先に応じて一定額の金銭的補助が得られる、というものです。これは私にとって魅力的に感じられました。とはいっても、それまでに私は留学について特別に意識したことはなく、「留学したい」と積極的に考えたこともありませんでした。正直に告白すると、金銭的な援助という後押しが大きかったと言えます。それでもこの留学は私にとって初めての海外渡航であったため、決心には多少の勇気が必要でした。しかし、友人や家族の勧めもあって留学を決意しました。

情報技術スキルアッププログラムは派遣先の決定まで面倒を見てくれるものではありません。そのため、研究室の先生方と相談して派遣先となる研究室を決めました。そして私の研究テーマである「文字認識」に研究内容が近く、以前から研究室間の交流があった台湾の国立清華大学のChiou-Ting Candy Hsu 教授(以降では「キャンディ教授」と書くことにします)にお世話になることになりました。その後渡航に向けてキャンディ教授と何度か英語でメールをやりとりし、渡航期間を決め必要書類の用意を進めました。

大学と周辺の様子

私が派遣された国立清華大学のある台湾・新竹市は台北から西南西へ約70キロほど離れた所に位置します。気候は比較的温暖ですが、私が滞在した11-12月は寒い日が多く、現地の人はダウンジャケットなどしっかりした防寒着を着ていました。一方で雨の日はとても少なく、滞在した2ヶ月間のうち、傘が必要になった日は片手で数えられる程度しかありませんでした。

台湾は日本と比べて外食文化が盛んです。国立清華大学の周囲も学生向けに飲食店や屋台が集中していました。そして台湾のほとんど全ての飲食店では注文用のオーダーシートが備え付けられており、それを用いて注文をする形式が一般的です。これは中国語をほとんど話せない私にとって都合が良く、書かれた漢字から大体のメニューを読むことができたので、このオーダーシートは便利なものでした。オーダーシートがないような店でもメニューを指さして注文をすることが出来ましたが、オプションメニューなどを選ばなければいけないお店では苦労しました。

大学から最寄り駅までは結構な距離が有るのですが、公共交通機関としてのバスは本数も多く長距離バス等もありました。何より安価で気軽に利用しやすいです。週末には長距離バスを利用して台北の方に出かけました。このバスは大学から台北までを1時間半ほどで結ぶバスで、運賃は約300円です。一方で交通ルールは良いとは言えません。どの車もかなりスピードを出して走り、バイクが車の間をぬって走っているため、道路を横断するときは注意が必要でした。

大学での生活について

国立清華大学ではキャンディ教授のご指導のもと、Multimedia Processing Laboratoryに所属しました。研究室には修士以上の学生のみが在籍しており、修士1年4人と修士2年2人、そして博士過程1人の7人の学生がいました。私は修士2年と博士の居室にデスクを借り、自信の研究テーマである「文字認識」に関する研究を行いました。この際、研究室の学生との会話には英語を用いました。台湾の人々の英語力の高さは、私が台湾留学中に驚いたことのひとつです。留学中、飲食店で同席した人と会話する機会が何度かありました。そういった時、どの方も非常に流暢な英語を話すので私はただただ自分の英語力の低さを痛感するのみでした。研究室のメンバーも私より英語が堪能で、コミュニケーションを取る上では私の英語力がボトルネックとなってしまいました。そのため、研究室メンバーと円滑なコミュニケーションがとれるように、毎日学生寮に帰ってきた後に英語の勉強をするようにしていました。

研究室では週に1回研究室内でのミーティングがあり、そこで研究室のメンバーが持ち回りで論文紹介と研究進捗についてプレゼンをすることになっていました。このミーティングは中国語で行われていたのですが、私が来たことによって研究室の学生は発表を英語で行うことになりました。研究室の学生にとってコレは急な指示だったのですが、彼らは毎回完璧な英語のスライドを作成し、英語での議論も非常に高いレベルのものでした。私は2週間に1回ほどのペースで進捗報告を行いました。専門的な内容に関するこうした発表を英語で行うことは私にとって初めてのものであり、最初の発表では非常に緊張しました。しかし、つたないながらも自分の考えを英語を用いて発表することによって、英語で話すことに自信が持てました。

ここで研究に関わる話をしておきましょう。私の研究テーマである文字認識は、風景写真などの画像中にある文字をコンピュータに認識させるというものです。渡航先ではこれまでの研究を延長して進める予定でした。しかし渡航後しばらくして、いままで研究したことのなかった「文字検出」というプロセスを加える必要が生じました。この文字検出について私はほとんど知識がなかったため、どうしたら良いものかと悩みました。そこで、キャンディ教授に相談をした所、その分野に関する論文を幾つか紹介して頂きました。その論文を読む過程でわからなかった内容については、研究室のメンバーに相談することで解決しました。その後、論文の内容を参考に文字検出のプログラムを実際に書きました。この頃が渡航期間の中で最も忙しかった時期で、ちょうど研究発表の近かったメンバーと共に、夜の12時ころまで研究室に残り研究を進めていました。そして完成したプログラムはと言うと、残念ながら十分な性能を得ることはできませんでした。しかし考案したアルゴリズムを他のメンバーに見てもらい、改善点などアドバイスをもらったことで、今後研究を進める上でのきっかけを作ることができたと思っています。

留学中、最も苦労したことはやはり言語面の問題でしょう。大きな失敗もいくつかありました。留学して最初の頃、研究室の友人の会話の速さについていけず適当に相槌を打ったことがありました。後日、もう一度その話について聞かれた際、私が話を理解していなかったことがバレて相手を嫌な気持ちにさせてしまいました。しかし、研究室の友人は最後に「わからなかったらしっかり聞けよ!」と笑いながら言ってくれました。それまでは変に意地を貼っていた私ですが、そのことがあってから思い切ったコミュニケーションができるようになったと思います。

留学を通じて

2ヶ月間と比較的短い期間の留学でしたが、非常に充実していて新鮮な驚きに満ちていました。しょっぱいと思っていた料理はどれも薄味、日本語が用いられている広告があくさんあったり、温厚そうなドライバーは100キロでタクシーを走らせる、台湾大学生の兵役事情…など例を上げればきりがないほど元々のイメージや予想と異なる文化を体験しました。この体験を通じて感じたことは「実際に見て確かめる」事の重要性です。日本にいながら知ることのできる他の国の情報というのは限定的なものであり、伝える側の意図によりトリミングされたり変形されたりしたものである可能性があります。そういった情報のみで出来上がった先入観のみで判断するのではなく、実際に見て確かめることによって得た情報に基づいて判断を行うことが大事だと思います。「見ると聞くとは大違い」という言葉を頭では理解したつもりでいましたが、それこそ実際に体験しなければ実感が湧かない言葉だったのです。

終わりに

私の留学は東北大学の先生方、現地の研究室メンバー、現地でできた友人といった方々の支持によって、最高のものに終わりました。最後に、今回の留学を支援してくださった森山様を始めとする情報科学研究科国際交流推進室の皆様に深く御礼申し上げます。貴重な留学機会をどうもありがとうございました。

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