日本人学生対象

経験者の声

Information

氏名 Name 滝谷翔 Sho Takiya
学年 Grade 情報科学研究科修士1年 GSIS M1
指導教員 Supervisor 徳山豪 Takeshi Tokuyama
留学期間 Stay 平成25年10月4日-11月4日 Oct. 4th-Nov. 4th, 2013
受入先 Destination Karlsuruhe Institute Technology

はじめに

東北大学大学院情報科学研究科修士1年の滝谷と申します。私は、JASSO情報技術スキルアッププログラムを利用して、2013年10月4日から11月3日までの1カ月間、ドイツのカールスルーエ工科大学に留学をしました。その時の体験や思ったことなどを中心に記したいと思います。

留学のきっかけ

私は、大学院に進学をするにあたって、学部時代とは異なる研究室に進学をしました。その際に、現在の研究室の先輩方が本プログラムを利用して留学をしていたことを知り、そういった機会があるのなら是非自分も留学をしてみようと思い、応募をすることにしました。

学部時代は、主に機械学習や確率の勉強が中心で、卒業研究では画像分類システムの制作を行いましたが、大学院に進学後は研究テーマを変更しようとも考えていました(現在の研究室は、最適化問題、近似アルゴリズム、計算幾何学やデータマイニングなどの研究を行っている方が多いです)。なので、正直なところ、応募の段階では自身の研究が今後どの方向に進展するのかわからず不安な状態でした。しかし、留学をすることになれば自分を追い込むことも出来ますし、また、留学をすることで新しい視点を持つことも出来るだろうとも考えていました。

もちろん、自身の研究をしっかりと発展させるために、修士2年になってからの留学も考えたのですが、翌年に必ず行けるか分かりませんし、早いうちに留学することの方が私にはメリットがあると考え、1年生で応募してみることにしました。

留学の準備

留学先の選定

とは言ったものの、そんな学生を受け入れてくれる所があるのか非常に不安だったのですが、指導教員である徳山先生に相談をしたところ、カールスルーエ工科大学のProf. Dr. Dorothea Wagner先生を紹介して頂けました。まず最初のメールでは、留学のお願いと、「現在は徳山研究室に来たばかりでまだ研究テーマを模索している最中である」ことを告げました。断られることも覚悟していたのですが、幸運にも快諾して頂くことが出来ました。

本プログラムで留学するにあたって、最も難しいのは受入先を見つけることだと思いますので、受入先を紹介して頂いた徳山先生と、受入を快諾して頂いたDorothea先生には本当に感謝をしています。

また、同研究室の先輩である遠藤さんと一緒に留学をすることも決定し、そのことも非常に心強く感じました。

住居

ということで、留学することが可能となりましたので、次は留学期間中の宿などを決めることにしました。Dorothea先生からは、留学先研究室のDr. Martin先生と秘書のBeckertさんを紹介して頂き、そのお二人に住居や渡航日などの相談にのって頂くことになりました。家賃の大体の予算を告げたところ、通学圏内のマンスリーアパートのリストを送って頂けたので、その中から決めることになりました。なので、賃貸を決めるのは比較的簡単に行うことが出来ました。家賃は1人部屋で570€/月で、家具付&週1回清掃が入るので良かったです。

部屋
部屋
キッチン
キッチン

若干のトラブル

日付を決め、住居を決め、航空券を購入してから判明したのですが、私たちがカールスルーエに到着する土曜日は不動産会社が休みで、その日に鍵を受け取ることなると110EURの追加料金が発生すると言われてしまいました。Martin先生が代わりに鍵を受け取ってくれることで解決したのですが、迷惑をかけてしまったのでよく確認しておくべきだったと反省しました。

留学の準備

留学が始まるまでの期間は、京都や長野で開催されるセミナーなどに参加をして、広い分野の研究に対して興味を持つようにしていました。そして、何となくですが、巨大グラフや複雑ネットワークの分野で進めてみようかと思うようになっていました。

大学での生活

研究室の環境

私が滞在することになった研究室は、基本的に博士課程以上の方々しかおらず、それぞれが個室、もしくは2,3人で部屋を持っていました。そのため、私たちは、主にPCルームで研究をすることになりました。先生からは、大学のデスクトップ用のログインアカウントを頂いたのですが、ドイツのキーボード配列が少し特殊で、使うと混乱しそうだったので自分のラップトップを使うことにしました。無線LANはeduroamが整備されていたので、特に設定することなく、東北大学のアカウントをそのまま利用することが出来て大変便利でした。

英語

初日には、Martin先生が研究室のメンバーと顔合わせをする場面を設けてくれ、それぞれがどんな研究を行っているのかを紹介して頂きました。いま思えば当たり前なのですが、皆がペラペラと英語を話すため、英語に自信のなかった私はこの時にかなり緊張をしてしまいました。思えば、このような状況になるのは、実はこの時が初めてで、これまでは、日本語が話せない人がマイノリティな環境であったり、旅行中のように単発のコミュニケーションだけで済んでしまうときにしか英語を使ったことがなかったのです。初対面で、これから1カ月間コミュニケーションを取らなければならない人達に囲まれて、しかも、誰も自分の気持ちを代弁してくれる人がいない状況は、個人的には結構な絶望感を味わうことが出来ました(笑)

その後、頑張って話そうと試みたのですが、突然話せるようになる訳もなく、自分でも何を言ってるのかわからない感じにまで空回りしてしまいました。皆が優しかったのが救いでしたが、それがまた辛かったです。。。

と、こんな感じで、いきなり言語の壁にぶつかったのですが、この経験はかなり貴重だったと思うようにしました(ポジティブに考えるしかない状況でした笑)。私の英語の出来なささがここまで露呈したのなら、開き直って多少間違った英語でも話してしまえばいいやと思えるようになりました。実際、それでも何とか伝わる場面が多かったですし、相手もわかりやすい英語を使ってくれるようになった気がします。余談ですが、日本に帰国してから、日本語が殆ど話せない留学生にも気軽に話かけることができるようになり、一緒に食事にも行けたりしたので、この考え方の変化は自分にはかなりのプラスでした。英語が楽しいから勉強したいと久々に思いました。

研究

研究の進め方としては、日本と全く同じで、基本的にはPCなどを利用して一人で論文などを読み進め、たまに、セミナーに参加をしたり、先生や他学生と相談する機会を設けるといった流れでした。また、先生からもMap Labelingに関するものなど、いくつか論文を紹介してもらいました。 色々と調べていく内に、自分としてはMatrix FactorizationやGraph Factorizationといった分野が面白いと感じるようになりました。

Matrix Factorizationは、画像認識の分野でも使われている技術で、行列を分解することで特徴量を得るというものです。また、今回メインで研究したGraph Factorizationは、webグラフやソーシャルグラフのような巨大なグラフを表す行列を、2つの小さな行列の積に近似するというものでした。一台のマシンではなく分散処理などを行って、いかにこれを高速化するかという研究をしたのですが、留学期間中に十分な成果を出すことは出来ませんでした。なので、現在は日本で研究を継続しているところです。

ドイツでの生活

食事

平日の昼は主に食堂に行っていました。パスタ、ライス、ポテトがメインで、6種類くらいのセットメニューがあり、毎日味付けが違うものが出てきていたので飽きることはありませんでした。味には結構差があり、個人的には、カットされたソーセージにカレーがかかっているものは美味しかったですが、ビーフシチューに甘いベリー系のソースが大量にかかっているやつはだめでした。

平日の夜は主に自炊をしていました。アパートの隣がスーパーだったので、とても便利でした。ドイツなので、チーズ、ソーセージ、ベーコン、ビールがとても充実しており、価格も安かったです。基本的には、パスタばかり作っていました。

飽きた時には、駅でケバブを買うか、持参した米を食べたりしました。

週末は旅行などをしていたので、外食することが殆どでした。

旅行

週末は大学が休みだったので、ミュンヘンやシュツットガルトに出かけたりしました。BMW博物館やお城の見学も楽しかったですが、特に、ミュンヘンのモダン・ピナコテークが良かったです。ダリ、ピカソのような著名な作品から、MacintoshやPS2、AIVOまで展示されており、かなり楽しむことができました。個人的には、マグリットの絵を見れたことが最高に良かったです。

シュトゥットガルト(やや逆光)
シュトゥットガルト(やや逆光)

お金とか

もちろん、クレジットカードは用意しておいたほうがいいと思います。私は、Visaカードとマスターカードを持って行きました。しかし、ヨーロッパはクレジットカードがあれば何とかなると思っていたのですが、実際は現金を使うことの方が多かったです。レストランや列車の切符はカードを使いましたが、それ以外の食料や雑貨などを買うときは殆ど現金で支払いました。そのため、手持ちの現金がなくなってしまい、引き落とす必要があって困ったのですが、たまたま持っていたスルガ銀行のVisaデビットカードが、キャッシング枠を使わないで口座から落とすことが出来て助かりました。

インターネット

これは想定外だったのですが、アパートにインターネット環境がなく、また、駅と大学くらいにしか無線LANがなかったため、とても困りました。ヨーロッパは公衆無線LANが充実しているなんて良く聞きますが、カールスルーエに関してはそんなことはなかったです。

国際学生証

また、留学するにあたって、国際学生証を発行しておくことをおすすめします。これがあれば、簡単な身分証にもなりますし、学生料金で美術館や博物館を利用することが出来たりします。東北大学の生協で1500円くらいで即日発行することが可能です。

最後に

とても短い留学でしたが、充実した濃い体験をすることが出来たと思っています。

日本では決して学ぶことが出来ないことの連続でした。

このような、貴重な機会を提供して下さった森山先生、留学のサポートをしていただいた徳山先生、塩浦先生、全先生、KITでお世話になったDorothea先生、Martin先生にこの場をお借りしてお礼申し上げます。

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