研究科長挨拶

情報科学研究科長 加藤 寧

新しい情報科学の構築と展開

情報科学研究科長加藤 寧

 

東北大学大学院情報科学研究科は1993年に東北大学で最初の独立研究科の一つとして創設され昨年で30周年を迎えました。文理融合を標榜する本研究科は、情報科学を自然科学系の分野としてだけでなく、人文・社会科学系の分野にもまたがる先端的かつ総合的・学際的な基礎学問として開拓し社会に貢献することを理念とし、情報基礎科学専攻、システム情報科学専攻、人間社会情報科学専攻、および応用情報科学専攻の4つの専攻から構成されています。研究科の発足以来、「研究第一主義」、「実学重視」及び「門戸開放」という本学の建学の精神に則り構成員が一丸となって様々な分野において優れた研究業績を挙げ世界を牽引すると共にこれまで4,099名の修士学位および959名の博士学位を授与し、学術の発展と産業技術の振興を支える卓越な人材を輩出してきました。

ここでは近年高い評価を受けている研究科の代表的な研究及び教育活動についてご紹介させて頂きます。

まずは研究活動について述べさせて頂きます。2019年に設置された「タフ・サイバーフィジカルAI研究センター」は世界最高の研究実績を生かしSociety5.0の先を見通した取り組みを力強く展開しています。産官学民が一体となって様々な大型プロジェクトを推進していることは本センターの大きな特徴です。2020年12月に情報基礎科学専攻に設置された量子コンピューティング共同研究講座では産学の力を集結し技術分野を超えた共通課題の抽出と解決を目的に量子関連技術の基礎と応用の深化を目指しています。本学が2022年に「量子ソリューション拠点」として文部科学省に認定され本研究科は中心的な役割を果たしています。2011年1月に研究科に発足した数学連携教室では、数学の汎用性と抽象性の強みを生かし数理科学を中心とした様々な科学分野間の横断的な連携により基礎研究の応用から新領域の開拓まで異分野融合の取り組みを推進しました。現在その機能が「純粋・応用数学研究センター」に引き継がれています。2023年11月に「NEC×東北大学 宇宙統合ネットワーク・レジリエントDX共創研究所」が設置されました。本共創研究所では社会のグリーン化・レジリエント化への寄与を目指し、宇宙統合B5Gネットワークを起点としたネットワーク新技術の確立及び実用化に向け、産学連携により新技術の創出とその社会実装を図ります。

次に教育面においては2017年に開始されたデータ科学国際共同大学院(GP-DS)では学際性と国際性を重視し、学内の六つの部局及び海外の研究教育機関との連携によりデータ科学を様々な分野で活用できる世界最高水準の人材育成を行っています。2021年度から本研究科がハブとして学内の複数の研究科と連携した文部科学省国費外国人留学生の優先配置プログラム「ディジタル・トランスフォーメーションを推進するデータ科学・AI実践人材の育成」がスタートし、実世界の問題発見や解決能力を持つグローバルに活躍できる人材育成を行っています。さらに2023年11月に本プログラムの後継プログラムとして「経済発展と社会的課題の解決に寄与するSociety 5.0時代の新しい学際領域人材の育成」というプログラム名で本研究科が申請し採択されました。これにより本研究科の国際化が更に加速しています。組織横断的な動きとして、2019年に情報基礎科学専攻に「データ基礎情報学」、2021年にシステム情報科学専攻に「人工知能基礎学講座」、2023年に応用情報科学専攻に「タフ・サイバーフィジカルAI学講座」と「先端応用データ科学講座」、そして2024年に応用情報科学専攻に「暗号プロトコル論講座」を設置しました。

今年は本学が国際卓越研究大学の第1号として認定される見込みで国内外から大きな注目を浴びています。また、本研究科において昨年に採択された「文部科学省の高度情報人材を強化するプログラム」により今年から30名の修士課程定員増となりました。これと平行して情報科学研究科2号館の新築工事も進められています。情報技術が進展している中、本研究科は従来にも増して社会から大きな期待が寄せられています。研究科の構成員が一体となり、多彩な研究分野を擁する本研究科の特徴を生かし、世界に貢献できる「新しい情報科学」を発信していく所存です。

今後ともご指導ご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 

令和6年4月1日