高次視覚情報学
システム情報科学専攻
高次視覚情報学 B12 Visual Cognition and Systems
我々は何を見ているのか—人の視覚機能の解明—
人間の脳機能は、環境に柔軟に適応できるシステムによって実現されている。このような脳機能を知ることは、工学を含め我々を取り巻く環境のデザインや評価にとってもっとも重要な課題のひとつである。本研究分野では、脳機能について特に視覚系の働きの研究から探求し、それに基づく人間工学、画像工学などへの応用的展開を目的としている。人間の視覚特性を知るための心理物理学的実験を中心に、脳機能測定やコンピュータビジョン的アプローチを利用して、視覚による空間知覚、立体認識、注意による選択機構のモデルの構築のための研究をしている。具体的には網膜上の画像から3次元空間を認識するために、立体視、運動視あるいは色知覚において脳の用いる方略を探りそのモデルをつくることから、適切な画像情報の評価、効率的呈示、視環境の評価などの研究や、注意による意図的、あるいは無意識的選択の過程の動的な特性を調べることから、様々な環境下での人間の視覚認識や行動を予測することができる。例えば、同じ物体を観察した場合でも、それが動いている場合と静止している場合では、見かけの奥行きが変化する。同じ色紙を見た場合でも、周囲の環境によって見かけの色が異なる。さらに目立つ対象に注意が向けられるため、それを認識するために必要な時間は短い。これらの刺激や環境に依存した視知覚の変化に対して有効な予測を行うために、人間の知覚についての実験的研究と脳機能を考慮したモデル研究を組み合わせた研究に取り組んでいる。
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本研究では,視覚刺激を見たときに誘発される脳波の計測によって、複数の位置における注意効果を同時に計測し注意の広がりを求めた.SSVEPは,注意を向けた位置を中心に,そこから離れるにしたがって注意の効果が徐々に低下するのに対して,ERPのP3という成分では注意位置のみで大きな効果を得ることができ,その周囲の情報はむしろ抑制されている.
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眼を動かしても視覚世界は動いて見えない.この説明の一つに,眼球運動に伴う変位検出能力の低下(サッカード変位抑制)による説がある.しかし,本研究は,眼球運動時の視野安定機構における新たな処理機構として,輝度過渡信号に選択的に応答する処理の関与を示唆した.