第10回統計科学セミナー(2024年7月12日開催)「推定方程式制約下での線形計画法による未観測交絡に対する感度解析法」のご案内
講演概要:
無作為化試験はもっとも強固な医学的根拠を創出する試験デザインとして広く受け入れられているが、無作為化試験の実施には多大な費用と時間が掛かり、疾患レジストリーや電子カルテデータなどの既存データを有効活用する試みが、リアルワールドデータの名のもとに広く関心を集めている。統計解析は観察研究の方法に則ることになり、交絡因子を適切に調整する必要がある。そのために傾向スコアによる解析が広く用いられている。傾向スコアによる解析を行う際に、傾向スコアで調整できない未観測交絡の問題が常に研究の限界として残される。未観測交絡の潜在的な影響を評価する感度解析の方法が様々提案されているが、未観測な変数へのモデリングを含むため、何らかの検証不可能な仮定に依存せざるを得ず、解釈が容易でない。本研究では、通常はパラメトリック傾向スコアの未知パラメータの推定に用いられる推定方程式を、傾向スコアが満たすべき制約ととらえ、推定方程式を制約とする線形計画法により未観測交絡の影響を評価する方法を提案する。提案法は解釈困難な感度解析パラメータの設定を最小限にした上で、平均因果効果の上限と下限を与える。その範囲が十分に狭くない場合には、既存の方法のような制約を課して範囲を狭めることも可能であるが、既存法よりも狭い範囲を与えることが経験的に確認された。また、このアイディアはメタアナリシスにおける公表バイアスの評価にも有用で、これまで困難であった公表バイアスのノンパラメトリックな上限評価のための簡明な方法を与えることができる。
イベント概要
イベント名称 | 推定方程式制約下での線形計画法による未観測交絡に対する感度解析法 |
日 時 |
2024年7月12日(金)16:30~17:45 現地開催 |
開催場所 | |
講 演 者 | 服部 聡(大阪大学大学院 医学系研究科 医学統計学教室) |
対 象 者 | 講演に興味のある学内外の方(研究者,学生,その他) |
セミナーHP | https://www.math.is.tohoku.ac.jp/~arakilab/tohoku/lectures/ |