第77回情報科学談話会のお知らせ(2019年10月31日開催) 高山 順 助教 「個別化医療の実現に向けたゲノム科学の現状と展望」・田宮 元 教授「バイオバンク・ゲノムコホート研究の現状と展望」

 
日時 2019年10月31日(木) 16:30~18:30
場所 情報科学研究科棟2階・大講義室
話題提供者 高山 順 助教
田宮 元 教授
提供者所属 高山 順 助教:東北大学 高等研究機構 未来型医療創成センター ゲノム情報科学グループ
田宮 元 教授:東北大学東北メディカル・メガバンク 機構リスク統計解析室
話題 高山 順 助教「個別化医療の実現に向けたゲノム科学の現状と展望」
田宮 元 教授「バイオバンク・ゲノムコホート研究の現状と展望」
概要  国際ヒトゲノム計画は、2001年に国際基準ヒトゲノム配列のドラフト版を報告した。それから18年を経た現在では、個々人の全ゲノム配列を現実的な時間とコストで解読することが可能となっている。個々人の全ゲノム配列の解読は個別化医療実現の基盤と目される技術であるが、ここでいう”解読”は国際基準ゲノム配列決定時の”解読”とは原理的に大きく異なり、ここに現状のゲノム科学の大きな問題の一つが存在する。
 本談話ではゲノム科学の基礎から現在のゲノム科学の抱える問題、および問題を克服するために本学および世界各国で行われている取り組みについて概説する。(高山 順 助教)

 複雑なありふれた疾患の発症に寄与する要因は、遺伝子ゲノムと環境リスク、ならびにその相互作用が想定されている。それらの要因の同定のためには、同じ対象集団に対して、網羅的なゲノム情報と生活習慣環境情報を取得することが必要である。複雑なありふれた疾患の病因に関する遺伝学的諸仮説、データ解析に関する統計的諸問題、その他の多くの要件を満たすためには、サンプル数は10万人超であり、尿や血液のような生体試料のバイオバンキングを行うことが求められる。このようなゲノムコホート研究には、ゲノム科学はもとより遺伝学、統計学、情報科学などの集学的努力が求められる。更に、実際のバイオバンクスケール解析には、環境情報につきものの諸バイアス、コホートデザインに特有の構造、集団の遺伝的背景、実験プラットフォームの違いなどへの理解が必要になる。以上の点につき、実例をもとに概説したい。(田宮 元 教授)