情報科学研究科30周年記念事業 東北大学 大学院情報科学研究科シンポジウム「情報科学」から「学び」を考える

学びが変わる 、DXが変える

Q&A

講演のテーマ・内容に関するQ&A

各講演に関してお寄せいただいた質問に講演者が回答しております。
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生徒がデジタル教材のなかで重要と思う部分や難しく感じる部分にマークした結果は、先生が経験に基づいて予想する部分と、どうのくらい一致している、或いはズレているのでしょうか?
これまでLEAFを用いて実施された100余りの授業を分析し、その授業をした先生方に半構造化インタビューを行いました。ご質問の点、つまり子供たちによるマークされた部分の分布と教師の事前の予測はかなり一致しています。先生方の長年の勘は流石です。一方、時には子供たちが意外なところにマークすることがあり、授業方法を大幅に変えることはないまでも、先生がが授業をする際に配慮すべきことが広がるような効果がありました。
教育データ収集の協力が得られない学校や自治体などでは、どういった理由で協力できない状沢なのでしょうか?
1つは法令的なことを背景とした理由です。個人情報保護条例などに照らして、例えば対象者の同意を得るにしても、どんなデータのどんな利用にはどんな同意書が必要か、まだ明瞭になっていないのです。もう1つは心理的な理由です人間は学んで成長していくのに、過去の間違いの記録がいつまでも残って参照されるのではないかということに不安を感じてしまうのです。そういった問題についてまだ十分に議論が尽くされていないために、協力が得られにくい状況があるのです。
AIを用いた学習や授業に関する研究は進んでいる一方で、一斉型授業や履修主義などの授業形式は変わっていない点にギャップを感じている。今後AIと用いた個別最適化教育を進めていく上で、新しい教育の形式(個別授業や修得主義)へのシフトも必要なのではないかと考えたが、その点についてはどう考えていらっしゃるかを伺ってみたい。また、国の中でとのような動きがあるのか、併せて伺いたい。
はい、ごもっともですね。しかし、例えば教材のマーキングの分析によって先生が授業をする際に配慮する範囲が広がるという話をしましたが、そういう経験をした先生が多くなっていくと思うのです。そうすれば、技術が普及して実践者が増えていくことによって、性急な大改革は難しいとしても、制度は次第に変わっていくものだと思います。
大学のラーニングアナリティクスや教育や情報に関するセンターは偏った人が集まりがちだし、たまに他分野の人を入れてもその人の成果が全然評価されない(周りの人が知らないから)というようなことが起こっていると思いますが、教育というものを考える組織はどうあるべきだと思いますか?
このシンポジウムの登壇者が情報科学の分野に偏っているのではないかと言われれば、情報科学研究科のシンポジウムですから、たしかにそのとおりです。しかし、同じ情報科学の分野のなかでさえ多様な研究者がいますから、今回のシンポジウムのような意見交換の場は重要です。今後は、教育学者や現場の先生も交えて議論することも可能だと思います。そうやって少しずつ対話と相互理解を広めていくことが重要だと思っています。