情報科学研究科30周年記念事業 東北大学 大学院情報科学研究科シンポジウム「情報科学」から「学び」を考える

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Q&A

講演のテーマ・内容に関するQ&A

各講演に関してお寄せいただいた質問に講演者が回答しております。
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その授業をうけるまえに持っている前提知識は人それぞれです。それでもみんなに同じ知識を身に着けてほしいわけですが、どのような工夫が必要と考えられますでしょうか?
学習者がもつ前提知識に差があるのは事実で、教育を行う上で大きな問題となります。例えば私が担当する大学院の心理学の授業でも、学部で心理学を専攻し知識が豊富な学生もいれば、全くの初学者も履修します。そのような状況で実践していることは、最初は、心理学専攻の学生には退屈かもしれませんが、基礎的な話からはじめて、徐々に難易度を上げていくことです。最終的な到達目標を明確化し、それに向けてどのような順にどんな知識を身につけてもらうか、よく考えるようにしています。
精緻化する以前の問題で「知識の質」が良いものである必要があると勝手に思っています。素朴概念(例:ふりこの実験で錘の重さは周期に影響を与えないが児童は影響すると考えやすい)が誰にも修正されなければ間違ったまま学習履歴データとして蓄積されるということはないのかなと思いました。さらに児童が間違いに気付き、考えを変更するにはどうしたら良いのか知りたいです。
おっしゃるとおり、素朴概念は、誰にも修正されなければそのまま誤った知識のまま蓄積されると考えられます。間違いに気づき、修正するためには、その概念を正しくとらえ直すための知識の枠組み(スキーマと呼ばれています)が必要です。それを獲得するために必要なことは、その概念に関連する多様な経験をすることです。それによって、物事をとらえるための柔軟な知識の枠組みが形成されます。
自己説明が苦手な子どもの自己説明力を上げるためには、どのようなアプローチの方法がありますか?
自己説明を可能にする重要な要素の1つはメタ認知で、現在の自分の認知状態を正しく把握する能力です。自分自身が何をわかっていて何をわかっていないのか、それを把握できなければ自己説明もできません。メタ認知を発達させるには、日ごろから自分の学習状態を内省するようにすることが大切です。自己説明を可能にするもう1つの重要な要素は表現力です。その訓練方法は様々で、例えば良い文章を提示して表現力を育む方法もありますが、私はその逆も実践しています。つまり、敢えて悪文を読ませて、どこがどう悪いのかを考えてもらい、そのような表現をしないような心構えをもってもらうことです。
マジカルナンバー3について、具体的なエビデンスはあるのでしょうか?
私がお話ししたマジカルナンバー3にエビデンスはありません。私の経験則です。ちなみに、ジョージ・ミラー(Miller, 1956)のマジカルナンバー7に対して、ネルソン・コーワン(Cowan, 2000)はさまざまな研究を概観して、マジカルナンバー4を提唱しています。