講演内容
- 講演
大規模ゲノムコホート研究における情報科学の役割
- 講演
医学系研究の新たな複雑系データのための統計モデリング
- 講演
健康や病気に関する医療情報の調べ方、利用のされ方
- 講演
メディアを通じた多文化向けの健康と医療に関する情報伝達の歴史
- 講演
バイオ医薬品の設計を加速する情報科学
- 講演
目には見えない分子や組織の構造の情報を捉え、創薬する
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パネルディスカッション 情報科学が描く健康長寿社会の設計図
東日本大震災からの創造的復興の一環として始まった東北メディカル・メガバンク計画のもと、個別化医療の実現をめざし、15万人のゲノムコホートの構築が進んでいる。このプロジェクトは医学系の研究者を中心に始まったものだが、膨大なデータなどの解析のために、情報科学の研究者もまた大きな役割を果たしている。本講演では、それらの解析全般を総括している立場から、健康・医療における情報科学の役割について議論したい。
医療現場では近年、様々な部位の生体情報など、精密な時空間測定データが大量に収集され、治療方針の決定などに活用されつつある。こうした複雑系データの解析に向け、医療応用に適した新たな統計モデルの開発など、バイオ統計学からのアプローチが求められている。本講演では、講演者が独自に開発に取り組んでいる統計モデル、さらには大学病院小児科や広島放射線影響研究所との協働による活用事例など、バイオ統計学の新たな展開を紹介する。
健康や病気に関する医療情報を調べようとするとき、インターネットでの検索は手軽だが、中には信頼性の低い情報もあり、注意を要する。本講演では、正確な情報が掲載されているサイトに効率よくアクセスするための“コツ”を紹介する。さらに、医療情報の利用のされ方という観点から、我が国におけるPHR(パーソナルヘルスレコード)構築の動向、そして、災害などで亡くなった後にも個人の医療情報の活用を可能にするシステムの構想などにも言及する。
多文化社会における健康・衛生・医療の情報伝達のあり方について考える際、参考になるのが19 世紀後半以後の満洲(現在の中国東北部)での事例である。そこで日本人は、中国人、ロシア人、朝鮮人、蒙古族そして満洲族などの多民族に向け、多様なメディアを通じて健康・衛生・医療の情報を伝えていた。本講演では、多文化社会において健康・衛生・医療の知識をどう伝達するのか、視聴覚メディアの利用に焦点を当て、その方法と内容について紹介する。
20種類のアミノ酸が脱水縮合した高分子であるタンパク質は、バイオ医薬品としても広く利用されている。タンパク質の機能を決定するのはアミノ酸の配列だが、取り得る配列の数は膨大である。そのため、労力・時間・コストをいかに抑え、目的の機能をもつアミノ酸配列を効率的に見つけるかが大きな課題となっている。本講演では、少ない実験結果から機械学習を中心とした情報科学を使うことにより、目的の機能をもつアミノ酸配列を見つけ出す技術について紹介する。
フレミングによるペニシリンの発見以来、各種疾患の標的タンパク質の機能を制御する分子を薬剤とする研究が盛んになる一方、標的タンパク質の構造の解析に基づき多数の薬剤が設計されてきた。また、タンパク質の構造がデータベースに多数蓄積されることにより、新規の構造を高精度に予測する時代も到来している。本講演では、標的タンパク質と薬剤複合体の構造を迅速に解析するために開発した技術、さらにはAI技術を活用した創薬手法などについて紹介する。
情報科学は、どのように私たちの生活を豊かで健やかなものにしていくのでしょうか?ゲノム解析、AI、ビッグデータを活用した予防医療や個別化医療の発展により、 健康寿命のさらなる延伸が期待できる一方で、こうした技術革新には倫理的、法的、社会的な課題も伴います。いかに課題を乗り越えウェルビーイングを実現するのか、さらにその先の未来に何が起こるのか、みんなで考えてみましょう。