東北大学 大学院情報科学研究科シンポジウム 情報科学から健康・医療・創薬を考える

情報科学で、よく生きる。

王 楽 特任助教

講演のテーマ・内容に関するQ&A

各講演に関してお寄せいただいた質問に講演者が回答しております。
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  • Q

    旧満州国における事例は多数ありましたが、それが民衆の健康にどのくらい寄与したかという結果はありますか?

    A

    当時の地方政府、中央政府、医療機関、赤十字会などから派遣され、診療や薬の配布を行った工作班は100以上に達しました。それぞれの工作班は半年程度の巡回診療を通して1〜2万人以上の患者さんと接触、年間に10万人程度の人々が工作班の診療を受けたという記録もあります。
    民衆の病気治療も目標の一つでしたが、もう一つの目標は、満洲国農村部に住む多民族の民族ごとの生体情報(民族ごとの異なる病気の情報等)の収集にあり、問診と聴診、手術などで得られたデータは大学の医学雑誌で盛んに掲載、発表が行われました。こうした目的からみると、民衆の健康への寄与、効果はその場その時だけに限定されたものだったのではないでしょうか。

  • Q

    過去の事例を踏まえて、最近のコロナ、特にコロナ初期の衛生に関する宣伝のメディア展開についてどう思われましたか?

    A

    コロナの初期の段階、私は日本に住み、日本と中国のメディアを同時に見ていました。コロナ初期の衛生に関する宣伝メディアは、日本ではテレビが一番重要な役割を果たしていたのではないでしょうか。マスコミ、とりわけテレビが圧倒的に信頼性を持っている と思います。NHKや民放などの大きなマスコミがインターネットに公式アカウントを開設しコロナ防疫に関する宣伝映像を掲載、それを多くの若者が見ているということがあったと思います。一方中国に目を向けると、若者に信頼されているのはTikTokのようなソーシャルメディアです。中国の言語統制下では、共産党のメディア機関全部がソーシャルメディアに公式アカウントを持っているので、テレビでもソーシャルメディアでも発信される内容は同じです。民衆が自発的に発信したコンテンツは、政府に悪い影響を与えるという場合、大体削除されていました。日本ではテレビの中で様々な立場の専門家同士の議論や論争があり、政府のコロナ防疫政策に反対意見を持つ専門家でもマスコミで発言できる環境があるというのはとても印象的でした。